症例ブログCase blog
麻酔導入とスケーリング
2017年6月21日
「歯石」や「歯周病」は気になってはいるけど、動物の「スケーリング」ってどんな感じなんだろう?
「スケーリング」はしたいけど、麻酔が心配で・・・
当院の看板犬「桃子」が「スケーリング」することとなったので、麻酔導入から流れを説明していきます。
歯に付着した「歯垢」を3日間放置すると「歯石」になると言われています。
毎日、歯垢の付着しにくくする酵素入りの歯磨きガムを与えていても、歯石は徐々に蓄積してしまいます。
人と違って、毎食後自分で歯磨きしてくれないので致し方ないのですが・・・
毎食後、酵素入りの歯磨きペーストを塗ったり、ガーゼを指に巻いて擦ったり、歯ブラシを使って磨いたり・・・なかなか出来ないですよね。
歯ブラシを噛ませている方がいますけど、歯肉炎の原因になる場合もあるのでお勧めは出来ません。
スケーリングに限らず、麻酔をかける子には基本「静脈留置針」を設置します。
「静脈留置針」とは点滴や静脈注射をするのに、何回も針を刺さなくてもいいようにする為の特殊な針です。
更に針を刺す回数を減らしてあげたいので、留置針から「術前検査」用の採血もしておきます。
安全性の高い麻酔と言っても呼吸が軽度抑制されるので、麻酔前に体内の酸素濃度を少しでも高くするために医療用酸素を吸わせておきます。
術中の刺激を抑制し、術後の痛みを軽減するために「鎮痛剤」を術前に投与します。
ガス麻酔の使用量を減らし副反応を軽減する為に、後肢に「鎮静剤」を筋肉注射します。
ガス麻酔を気道に直接送り込むための「気管内チューブ」を挿管します。
「気管内チューブ」を挿管するためには、喉頭反射を止めなければいけないので「麻酔導入薬」を留置針から入れると寝ます。
「気管内チューブ」は、スケーラーから出る水や除去した歯石の誤嚥を防ぐためにも必須。
「静脈留置針」に点滴をつなぎ、「気管内チューブ」にはガス麻酔器とつなぎガス麻酔と酸素を流し麻酔を維持します。
心電図などの生体モニターを装着して、手術の準備は完了です。
完全に寝た状態で、歯石や歯肉炎の状態などを最終確認します。
「桃子」の場合、後臼歯の歯肉に軽度の炎症が認められます。
超音波振動を利用して、注水下で歯石を粉砕・除去する「超音波スケーラー」を使用します。
歯の表面にスケーラーを軽く当てるだけで、超音波振動で歯石を取り除くので歯の表面の傷も最小限で済みます。
もちろん、歯周ポケット内の歯垢・歯石も根こそぎ除去します。
「ハンドスケーラー」に比べ、歯の表面を傷つける可能性は極端に低いのですが、ゼロではありません。
「粗削り」と「仕上げ」用のペーストを使って歯の表面を研磨する「ポリッシング」を行います。
歯の表面のザラつきを無くしておかないと、表面の傷に歯垢が付着し易くなります。
「歯垢」を3日間放置すると「歯石」になってしまうので、スケーリング後の歯を管理をする上で「ポリッシング」は重要な工程なのです。
処置後、歯はピカピカになりました。
口臭の原因の一つでもある歯垢・歯石を除去することで、口は臭くなくなりました。
術前の血液検査において腎臓・肝臓ともに異常がなかったので、麻酔の覚醒も順調でした。
10歳目前の「桃子」でも、麻酔をOFFしてから30分後にはこの通り。
顔は少し「ばー」っとしているけど、痛がったり口を気にすることもなく、歩けるまで回復しました。
個体差はありますが、老齢になるほど麻酔からの覚醒も悪くなります。
歯石の付き具合と年齢のバランスをみて、処置するタイミングを見計らってスケーリングをお勧めしています。
小牧獣医科病院では、処置後の経過観察をしたいので夜までお預かりします。
午前中にお連れいただき、昼に処置し、当日の19時から20時のあいだにお返しするので、日帰りで処置できます。