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骨折・Ⅱ

2017年2月16日

イタリアン・グレーハウンドを抱っこしていたとき、音に驚いて飛び降りてしまい、その先にテーブルがあったため、ぶつかって両前足を骨折してしまった症例です。イタリアン・グレーハウンドは足が細い犬種の代表格ともいえます。


レントゲンで確認すると、足の細い小型犬の一番折れやすい、しかも折れて欲しくないところで骨折しています。骨の真ん中で折れてくれる分には、手術して固定しやすいのですが、骨折腺から手首側の骨が短いので、安定させるためのピンを打ち込むスペースが限られてしまい、工夫してピンを打ち込まないと強い固定が得られません。
さらに、骨を取り囲む筋肉が少ない部位(皮膚の上から骨の形が触れてしまうような部位)は、折れた骨がくっつきにくい部分でもあります。折れた骨がくっつくには、周りの筋肉から栄養分を得なければいけません。筋肉が少なければ当然、筋肉からの栄養が少ないので、骨から筋肉をなるべく剥離しないような術式を選択します。

骨折部分を金属のプレートで補強する方法もありますが、大きく筋肉を骨から剥離した後、プレートをビスで留めなければならないので、この部位にはあまり向いていません。

両前足の骨折なので、早く足を着地し、体重を支えられるようにしてあげなくてはいけないので、細いピンを皮膚の外から2方向に刺す創外固定法のType I bにしました。

ピンは細いものを斜め方向から刺入することで、骨片のスペースを有効に使い3次元的に立体を構成することで高い強度が得られます。

術後のレントゲン写真です。
骨折腺より手首側の短い骨片に斜めから2方向にピンを3本打ち込むことが出来ました。反対の長い骨片には4本打ち込んであります。

ピンを支えるパテがリング状になるため、骨折端のくっつき具合を確認するレントゲンでの経過観察がしやすいという利点もあります。

手術の2日後には、手術をした左前肢にしっかり体重をのせて立つことが出来るようになりました。

右前肢は骨折端がずれると痛みを伴い、腫れると手術がしにくくなるので、アルミの副木で仮固定してあります。
右後肢の包帯は手術時に点滴を流すための留置針を保護するためのものです。

後日、右前肢も同様に手術をしました。
麻酔時間が長くなると負担が大きくなるのと、確実に体重を支えられるようになってから右前肢の骨折整復手術をしなければならないので、2日に分けて片足ずつ手術することとなります。

体重を支えるため、強めの固定をした事で骨折部分にかかる負担が弱くなった為、骨折の治癒が少し遅れたので3ヶ月弱で左前肢のピンを除去しました。(固定器具が強すぎると固定器具に頼ってしまい、生体は怠けて骨をくっつける努力をしなくなってしまいます)。

右前肢のピンも除去し、最後の検診時です。

ピンを抜いてから、しばらくはピンの刺さっていた穴が塞がらないので、激しい運動は控えてもらいますが、通常の生活であれば問題ありません。

骨折して来院されたときは、激しく泣き叫び、飼い主様も「断脚しなければいけないのでは」と、心配されていました。そのことを聞いたのが、この症例集を作るきっかけになりました(うちの子治るのだろうか?どんな手術なのか?経過は?といった心配を少しでも和らげたらと思い…)。

時間はかかりましたが、定期的(1~2週間毎)に通院していただき、無事歩けるようになりほっとしました。治療には、飼い主様の協力がとても重要だなぁと感じた症例でもありました。