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避妊手術(犬)

2017年2月15日

卵巣と子宮を摘出する事によって交配・発情時期がなくなります。子宮を取るので、高齢になってから発症しやすい「子宮蓄膿症」という病気の発生を抑える事にもつながります。

■ 術前検査 ■

手術を予約いただいた日は、朝から食事・水など口から入れるものは無しで午前11時までにご来院いただきます。
来院後、聴診・触診をし体調に問題がないことを確認します。
麻酔をかける前に腎臓や肝臓に問題はないか、貧血や脱水はないかを血液検査で確認します(麻酔によるトラブルを未然に防ぐため)。

■ 検査結果報告 ■

血液検査の結果を参考に、手術は可能か・肝臓や腎臓の治療を追加しなくてもいいか(肝臓・腎臓に負担がある場合、麻酔の覚めが悪くなることがあるので)を検討し、飼い主様に説明します。
お時間のない方は朝お預かりして、こちらで検査結果を確認し手術可能かを判断し手術を行うことも出来ます。
万が一、検査結果が思わしくなく手術が出来ない場合は、電話連絡にて今後の治療や手術を検討することとなります。

■痛み止め ■

1時間前までに痛み止めの注射を打ちます(先行鎮痛)。
犬や猫も人間と同様に手術中は麻酔によって痛みは感じませんが、脊髄や脳には痛みの刺激が伝達されている為に、麻酔覚醒後その痛みは増強されてしまいます。この痛みを軽減する「ペイン・コントロール」を当院では取り入れています。
ペイン・コントロールをする事で、術後の痛みから解放されるだけでなく、傷口の回復も早くなります。

■麻酔管理 ■

点滴用の針を留置し、栄養点滴を流します。点滴を流す事で腎血流量が増し、腎臓の保護ができるだけでなく、絶飲食による体内の水分・電解質のバランスを整えられます。
また、静脈に針が留置してあるので、出血や血圧低下などの突発的なトラブルにも迅速に対応できます。
気管内チューブを挿管し酸素と吸入麻酔薬を肺に送り麻酔の深度を維持・管理します。

心電図で心拍の状態をモニタリングし、乱れがないかを確認します。


■ 子宮卵巣摘出術 ■

皮膚を切開し、出血の少ない腹直筋の付着部分(正中)を切開し、腹腔内の卵巣と子宮を出血がないように糸で結紮(けっさつ)し摘出します。
丁寧に手術すれば出血もほとんどなく、新人ナースが「ドラマみたいに出血しないんですね」と感想をもらす程度で済みます。

■ 手術終了■

閉腹前に腹腔内の出血を再度確認し膀胱を圧迫し排尿を確認後、腹直筋を縫合し皮下脂肪を縫合します。
最後に皮膚を糸状のワイヤーで縫合して手術は終了です。腹直筋と皮下脂肪は飼い主様のご希望で一定期間の後に溶ける吸収糸を使用することもできます。
皮膚のワイヤーは感染症の可能性が一番低いのですが、溶けないので数日後には抜糸が必要です(抜糸が出来ない子には、吸収糸で外の皮膚を縫合する事もありますが、術後管理に注意が必要となります)。


■麻酔覚醒 ■

若くて腎臓・肝臓に問題のない子なら、麻酔を切ってから5~10分もすると頭を持ち上げるようになり、1時間もすると写真の様な感じです。
麻酔が覚めるまでの間に、抗生物質や止血剤・炎症止めを注射し、飼い主様の希望があれば普段嫌がるような処置(爪切りや耳掃除など)、残存乳歯の抜歯、ライフチップ(個体識別マイクロチップ)の挿入などもできます。
また、麻酔を少し延長して、超音波スケーリング(歯石除去)を希望される方も多くいらっしゃいます。
麻酔が覚める前に飼い主様に持参いただいたタオルで傷口を覆うように服を作成し、着せることで約9割以上の子がエリザベスカラーなどをつけずに済みます。
避妊手術の場合、念のため一泊入院です。

■ 退院 ■

翌日の退院は午前10時過ぎなら可能となります。夜から飲ませてもらう薬(錠剤か粉薬の選択できます)の説明後、おうちでの生活の注意事項をお話します(激しい運動をさせなければ通常の生活ができます)。
次回来院日を確認し歩いて帰宅となります。

■ 抜糸■

術後約10日程で抜糸が可能となります。服は抜糸まで着せておいてください。
糸が通っていた穴は一日程でふさがるので、シャンプーやお水遊びは抜糸をしてからマルッと一日後から出来るようになります。
以上で避妊手術が一通り終わりです。

避妊手術は健康な子に行う手術なので、健康な状態でお返しすることが大切と考えております。「若いから・元気だから」といって術前検査の省略・麻酔管理の省略などはできません。一つ一つ手技を丁寧に行うことでより安全にお返しすることが出来ます。
開腹し、臓器を摘出するのですから難易度はそんなに低いとは言えませんが、手術を行う回数が多いので安全性は高い手術といえます。
避妊手術のメリット・デメリットを考慮の上(診察時にご相談いただければご説明致します)、ご家族の皆様で考えていただければと思います。