症例ブログ|小牧市堀の内で動物病院をお探しの方は小牧獣医科病院まで

Tel. 0568-72-8221
〒485-0046 愛知県小牧市堀の内3-77・78

  • 電話
  • メニュー

去勢手術(猫)

2017年2月16日

今回は猫の去勢手術の流れを紹介します。
基本的な流れは犬の去勢手術もほぼ同じような流れで行われます。若干の違いは、麻酔薬の選択や術中の静脈点滴、睾丸摘出の際の切開部位くらいでしょうか……。

睾丸を摘出することによって得られる予防的なメリットも沢山ありますので、この症例報告を参考に今一度去勢手術について家族で話し合っていただければと思います。

■ 同意書記入 ■

避妊手術と同様に、手術日の朝から食事・水など口から入れるものは無しで午前9~11時の間にご来院いただきます。

お預かりする際に手術の同意書と小牧市からの避妊去勢手術補助金の申請書(小牧市にお住まいの方のみ)に記入・捺印をいただきます。

■ 血液検査 ■


聴診・触診をして体調に問題が無いか確認をします。麻酔をかける前に腎臓や肝臓に問題はないか、貧血や脱水はないかを血液検査で事前に確認します(麻酔によるトラブルを未然に防ぐため)。
血液検査の結果を参考に、手術は可能か・肝臓や腎臓の治療を追加しなくてもいいか(肝臓・腎臓に負担がある場合、麻酔の覚めが悪くなることがあるので)を検討し、飼い主様に説明します。

お時間の無い方は朝お預かりしてこちらで検査結果を確認し、手術可能かを判断した上で手術を行うことも出来ます。万が一検査結果が思わしくなく手術が出来ない場合は、電話連絡にて今後の治療や手術を検討することとなります。

古真希ちゃんは出身がダンボールで親の素性が分からないため、追加で猫エイズウイルスと猫白血病ウイルスに感染していないかも血液で確認しました。

■ 痛み止め ■

手術1時間前までに痛み止めの注射を打ちます(先行鎮痛)。

犬や猫も人間と同様に手術中は麻酔によって痛みは感じませんが、脊髄や脳には痛みの刺激が伝達されている為に、麻酔覚醒後その痛みは増強されてしまいます。

この痛みを軽減する「ペイン・コントロール」を当院では取り入れています。ペイン・コントロールをする事で、術後の痛みから解放されるだけでなく、傷口の回復も早くなります。

■ 麻酔導入 ■

気管内チューブを挿管し、酸素と吸入麻酔薬を肺に送り込むことで麻酔を維持・管理します。

また、心電図で心拍の状態をモニタリングします。

■ 手術 ■

陰嚢だけが露出するようにドレープ(手術用の覆布)をかけます。皮膚をメスで切開して、さらに睾丸を包み込んでいる総鞘膜(ソウショウマク)を切開すると睾丸がプルンと露出されます。睾丸から総鞘膜を切り離し(右の鉗子で挟んでいるのが総鞘膜)、精管と動・静脈をまとめて2ヶ所糸で結紮します。睾丸を切り離し、出血が無いのを確認し、総鞘膜の中に戻します。総鞘膜の先端を結紮し余分な膜を切除します。反対側の睾丸も同じ手術で摘出します。

出血はかすり傷程度しか出ません。

皮膚を手術用ワイヤーで縫合することで大半の子がエリザベスカラーをつけなくても済みます。
皮膚のワイヤーは感染症の可能性が一番低いのですが、溶けないので数日後には抜糸が必要です。

(抜糸が出来ない子には、吸収糸で皮膚を縫合する事もありますが、術後管理に注意が必要となります)。

■ 栄養注射とオプション ■

手術終了と同時に吸入麻酔薬を切り、酸素のみ送り麻酔が覚めるのを待ちます。

その間に栄養点滴をし、抗生物質や止血剤・炎症止めを注射します。5~10分もすると頭を持ち上げるようになります。

背中に皮下点滴(栄養注射)と抗生物質・止血剤を注射しておきます

ついでに大事な古真希ちゃんが盗まれないようにライフチップを皮膚の下に挿入しました(注射と同じように皮下に入れるので麻酔下でなくてもできます)。

世界に一つだけの古真希ちゃんの番号をデータ管理センターに登録されるので、迷子や地震などで離れ離れになってしまっても、読み取り機を首元にかざせば番号が表示され、飼主の元に連絡が来ます。

■ 目覚め ■

1時間もするとこんな感じです。
一応、吐いたり・出血したりしないか監視したいので、お迎えは19時以降となります。明朝から飲ませてもらう薬(錠剤か粉薬を選んでください)の説明後、おうちでの生活(激しい運動をさせなければ通常の生活ができます)・次回来院日を確認し帰宅となります。

■ 抜糸 ■

術後10日くらいで抜糸が可能となります。

以上で去勢手術が一通り終了となります。

去勢手術は健康な子に行う手術なので、健康な状態でお返しすることが大切と考えております。「若いから・元気だから」といって術前検査の省略・麻酔管理の省略などはできません。一つ一つ手技を丁寧に行うことでより安全にお返しすることが出来ます。

手術手技自体は簡単な部類に入りますが、麻酔をかけてから覚めるまでの過程は他の手術と変わらないので気を抜くことは出来ません。

麻酔をかけなければならないというリスクはありますが、発情期のストレスや色々な所に尿をかけるスプレー行為の抑制、オス猫同士の喧嘩による化膿・ウイルス感染を未然に防ぐ事もできますので、繁殖を考えていないのであればお勧めいたします。

犬の場合、去勢手術をしておくことで、マーキング行為の抑制だけでなく、7~8才位から見られる排尿障害の原因となる前立腺肥大や肛門周囲にできる癌を予防することが出来ます。