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耳血腫

2017年2月16日

右耳が腫れて痛がっているとのことで来院。耳血腫は触診で判断できます。触診すると耳介の皮膚の間に液体がたまって水風船のように“ぷよぷよ”しています。

耳介は皮膚と皮膚の間に軟骨があり、形を形成しています。この耳介軟骨には細かい血管がたくさん走っていて、後肢で耳を引っかいたり・頭を激しく振ったりして耳介に刺激が加わると軟骨の細い血管が切れてない出血し皮膚と軟骨の間に血液がたまり腫れてしまいます。原因は、耳に痒みを生じさせる外耳道炎やノミ・ダニの感染・アレルギーなどが考えられますが、自己免疫疾患の関与も考えられます。

ちなみにこの子は無数の小さなダニが寄生していたのでダニ駆除を行い、注射針によって液体を吸引除去し、圧迫包帯と炎症止めや抗生物質などの内服で様子を見てみましたが改善が見られないため、飼い主様との話し合いで手術する事となりました。

血液検査・点滴の準備などを済ませ、麻酔がかかったところで耳介を中心に毛刈りをします。毛がなくなると液体が貯留し腫れているのが分かりやすくなり、かなり広範囲にわたって皮膚と軟骨が遊離している事が確認されました。

耳介の内側S字に切開し、貯まった液体を排出します。

内部を確認すると一部分に血餅(血が固まった物)が付着していたので、それらの物を全て除去します。

鉗子で鋏んだ所で細かい血管が切れていました。

皮膚と耳介軟骨の間に付着した血餅の副産物(これを放置すると皮膚と軟骨のくっつきが悪くなり再発の原因となります)をガーゼできれいに拭き取っておきます。

←血腫で遊離した皮膚と耳介軟骨を密着するようにマットレス縫合という特殊な縫い方で液体が貯留していた部分を隙間なく耳介が歪まないような力加減で縫いつめます。

S字切開した所は染み出てくる液体がたまらない様に開放しておきます。

麻酔が覚める前に、傷にくっつかず吸水性のある特殊滅菌パッドと医療用テープで圧迫し、後肢が直接耳介に当たらないようにエリザベスカラーを装着して退院となります。

1週間後の状態は液体貯留もなく経過良好。
縫合した糸を半分だけ抜糸し、10日後また診せてもらう事としました。

■ 10日後 ■

S字切開部も綺麗に塞がり、液体貯留もないので全ての糸を抜糸し、終了となります。

耳血腫は、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ビーグルなどの垂れ耳の犬種に多く発生しますが、今回のように立ち耳の子や猫でも発生します。

ゴールデン・レトリバーのような毛の長い垂れ耳の子だと無処置でも耳介の変形が割りと目立ちませんが(本人は痛みや違和感といった苦痛があるので内科処置は必要だと思います)、短毛や立ち耳の子は耳介が変形して萎縮するとかなり目立ってしまいます(動物が自分の見た目を気にする事はありませんが、飼い主様は…)。耳介の変形は血腫の大きさや範囲によっても違ってきますが、格闘家の“ギョーザのような耳”のようになってしまいます。

治療法は小さな血腫なら血を数回抜いたり、薬剤を局所に注入したりする方法もありますが、大きな血腫だと時間も本人のストレスも大きくなり変形する可能性も高くなるので、手術を行うことが多くなります(老齢などで麻酔の負担が大きい場合はドレーンチューブなどを装着する方法も)。

今回は、立ち耳で血腫も大きかったので、心配しましたが耳介が萎縮することなく治り飼い主様に喜んでいただけほっとしました。